超高速冷暖房システム
【1】目的
遮熱に取り組み20余年になるが、その殆どは大型建物や店舗等企業向けの遮熱工法の開発で有った。理由は簡単で、企業関係は電力需要が大きい事で費用対効果が大きい事にあります。
しかし、一般住宅では年間の使用電気料も少ない事や、熱を一番受け易い屋根の面積が建物全体面積に比べて少ない事、結果費用対効果が小さい事にあります。単純に言えば、広くてフラットの屋根が大型建物、縦長で小さいのが一般住宅という事になります。
もう一つ重要な事は、建物を出入する熱の流れが変わってきている事にあります。
例えば、これ迄は昼間屋外から室内に侵入した熱は天井付近に滞留し、気温が下がる夜間に屋外に放出されています。そして、朝には元の状態に戻っている熱の循環方式でしたが、これから夜でも熱帯夜で熱く一日中エアコン付けっ放しが常識となります。即ち、熱は昼夜問わず、屋外から室内に向かう一方向型になります。となると、今後は屋外からの熱を如何に室内に入れないかが重要になり、遮熱の大転換をする必要が有ります。
又、温暖化の勢いは増すばかり、熱中症対策や省エネルギー対策が急務となっています。
そこで、一般家庭でも取り組める遮熱システムを提案するものである。
【2】気温の変化と問題点
(1)昼の気温が体温(36.5℃)を超えたら
日陰は暑いが常識、体温上昇に最も影響のある輻射熱をカットした屋根下等へ移動が重要!!
熊谷市::41.4℃(2017年)
イタリアシチリア島::48.8℃(2020年)
米国カルフォルニアデスバレイ::54.4℃(2020年)
(2)昼の気温が、夏日(25℃)を超えたら
気温が25℃にもなると屋根の温度は80℃にもなり、その熱は室内に侵入します。その結果、何もしないと室温は40℃以上にもなり熱中症の大きな要因となります。もう、年の半分以上が高温日、子供やお年寄りの熱中症対策が重要!!
2019年 東京 (気象庁)
夏日126日、真夏日55日、猛暑日12日、合計193日
(3)夜の気温が、熱帯夜(25℃)を超えたら
夏の夜は外気温が低下し、窓を開けておくと涼しさが感じられました。もうそれは昔の話、今後は熱帯夜が増加します。エアコンは一日中稼働、電気料金が増えるだけでなく、体調不良の恐れも!!
熱帯夜の日数(2021年)
沖縄県 129日
鹿児島県 47日
【3】超高速冷暖房システムとは
高速冷暖房方式+自熱暖房効果
遮熱材は反射率+放射率=100と表されるが、超高速冷暖房システムは、この放射側の性能を利用したもので有る。
遮熱材を室内側に施工する事により、夏は屋外から室内に侵入する輻射熱の88~90%阻止する事が出来る。一方、冬は室内から屋外に向かう輻射熱の88~90%反射して室内に戻します。
遮熱材が室内側にあるので、体から放射される熱を反射し再び体に戻す自熱暖房効果も利用できます。
遮熱材は、表面を乱反射構造としているので、窓から差し込む太陽光の反射等で目を傷める事はありません。又、この遮熱材を使用する事で、ビニールクロスは不要となります。
【4】省エネルギー対策に効果を発揮
(1)建物を移動する熱の割合
建物を移動する熱の割合は、何と75%が輻射熱です。従って、この輻射熱を阻止する事が省エネルギーに最も重要で、それには遮熱材が効果的な方法です。
(2)超高速冷暖房システムの有効性
遮熱材は、反射率+放射率=100%で表されますが、その性能を最大限に引き出すには下図のように放射側温度は低温が好ましい。
これ迄昼は屋外から室内に、逆に夜は室内から屋外に向けて熱移動の方向が変化するので両者共効果的な壁面の中央付近の施工が一般的でした。
しかし、熱帯夜が増え夜でも外気温が室温より高いと、熱は絶えず屋外から室内に向かって熱移動の一方向型に変わります。
超高速冷暖房システムは、遮熱材を壁面の室内側に直貼りする事により放射側温度を低減する事が出来、最高の性能を引き出す事が出来ます。
≪遮熱の基本形≫ ≪現状の外壁遮熱工法≫
(超高速冷暖房システム)
(3)超高速冷暖房システム温度検証
気温25.4度の室内で、石膏ボードの表面に遮熱材とビニールクロスを貼った場合の室内側の表面温度を測定しました。熱源側温度が35℃の時表面温度の差は1.9℃、40℃の時4.5℃、45℃の時は7.6℃も低下しています。室温1℃低下で省エネ10%と考えると、大きな省エネになる事が解ります。尚、熱源側温度とは壁の中の温度です。
【5】結露対策に効果的
(1)壁内結露
壁面で一番低温になるのが室内側壁面なので、壁内結露はありません。更に、遮熱材を使用する事でその表面温度も通常より上昇、結露のしにくい環境になります。
(2)表面結露
冬、北側の部屋の壁面の表面に起こりやすく、時には滴れるほどの結露やカビの発生を伴う事もあります。これは、室内の湿った空気が低温の壁面に接触して起こりますが、室内の壁面に遮熱材を使用すると壁面の表面温度が上昇し結露の発生を防ぐことが出来ます。
【6】各種健康被害に効果的
(1)熱中症対策
“熱中症の最大の要因は輻射熱(電磁波)
最も重要な対策は体温上昇を阻止する遮熱!!“
毎年、多くの方が熱中症で死亡しています。特に室内にいながら熱中症にかかり死亡する高齢者の方が増えているニュースもよく耳にします。しかし、これに対する根本的な対策がなされていない様にも思えます。そこで、熱中症に関する予防法を調べてみました。
熱中症は日射病や熱射病の総称で、体温を調整する機能がコントロールを失い、体温がどんどん高くなってしまう機能障害だそうです。一般には、炎天下のみ起こるように思われがちですが、室内で静かにしていても起こります。気温が体温より低く湿度も低い場合は、皮膚から空気中に熱が伝わりやすく体温の調整がしやすくなります。特に、湿度が低いと汗をかくことで体温をコントロールすることが出来ます。しかし、気温が体温より高い場合、空気中への熱の放出が難しくなり体温調整は発汗だけに頼ることになります。しかし、湿度も75%を超えると汗をかいても流れ落ちるばかりで殆ど蒸発しなくなり体温調整すら出来なくなるようです。
そして、体温42℃以上になると生命は維持できなくなるそうで、熱中症対策には小まめに水分や塩分の補給が大切との事です。
これら種々の情報をみると、起こりやすい環境、かかりやすい人間、症状そして対処法等様々な角度から検証されていると思います。又、熱中症は体温の上昇が最も大きな要因と言う事もわかりました。しかし、運動すれば体温が上昇するのは理解できますが、室内に静かにしていても体温が上昇してしまう理由についてはどの報告にも記載されていません。
室内で起きる熱中症の事を、隠れ熱中症という方がおりますが、別に隠れている訳では無く極当たり前のことです。そこで、熱中症の起こるメカニズムを説明します。
①室内にいて、体温を上昇させる要因は気温や湿度だけでなく、人体に照射される輻射熱(電磁波)の量が大きく影響しています。以前、日蔭と日向の説明をしましたが、同じ気温でも輻射熱を受けている量が少ない日蔭は涼しいけれど、日向は太陽からの輻射熱が直接照射されていて熱く感じます。屋外では、赤外線と一緒に可視光線も含まれているので解りやすいのですが、室内は可視光線が無いのでわかりにくいと言えます。
②建物を通過する全移動熱の75%は輻射熱、又天井からの熱の93%も輻射熱です。従って、室内で静かにしていても、目には見えませんが大量の輻射熱が人体に照射されていて、体温上昇の要因になっています。
③遮熱材は、この輻射熱の96~98%をカットすることが出来ます。従って、体温の上昇を少なくするには、建物全体の遮熱が有効になります。
即ち、熱中症対策には遮熱された建物や空間にいることが効果的!
是非、この事実を多くの方々に知っていただき、積極的な取り組みを期待したいと思います。
(2)冷房病
最近、熱中症と同様、夏場の病気として増加しつつある病気に冷房病があります。昔は、製氷業や冷凍倉庫業等寒い環境で仕事をする人の病気と思っていましたが、今や子供からお年寄りまであらゆる層でこの病気にかかるようです。
この病気にかかる要因は、エアコンによる体の冷えすぎと、冷房の効いた室内と暑い屋外の温度差に体がついていけない事で、これらによって起こる自立神経失調症のようです。一般には、室温25℃以下に下げるとこの様な症状が起こりやすいようです。では、この病気を防止するにはどうしたら良いか。
答えは簡単、エアコンを使用しないで済む環境を作ることに有ります。
建物全体を遮熱した新築住宅では、夏場数日しかエアコンを使用しない、或いは使っても極僅かだったという報告が殆どです。
又、新企画として提案する、後述の“ダブル遮熱の家”等をお勧め致します。新築のみならず、既築建物にも施工可能です。
(3)脳卒中
脳卒中は、癌、心臓病等の成人病と並んで戦後の3大死亡原因の一つで、脳の血管に障害が起きると突然発症する病気です。脳の血管がつまったり、破れたりすることで意識を失ったり手足が麻痺したり、ときには死
に至る可能性もあります。主な種類は、脳 出 血、くも膜下出血、脳 梗 塞の3種です。
脳卒中は生活習慣病で、高血圧や糖尿病他種々の病気にかかっている人に起こることが多いようです。
季節的には冬期に集中、夏場の1.5倍の発症率があります。又、発生の多いエリアとして東北地方に多いことは良く知られていますが、室内の温度差が一つの要因であると指摘されています。北海道は寒さが厳しいにもかかわらず東京と同等の死亡率ですが、これは全館暖房が多く建物内温度に大きな差がないことが理由のようです。
個別暖房の場合、暖かい部屋から寒い部屋へ移動すると、急激な温度変化によって体がヒートショックを受けることがあります。温度が急激に変化することで血圧や脈拍が上昇・下降して、心臓や脳に大きな負担をかけ脳卒中を誘発するようです。暖かい地域の住宅でも真冬には暖房した部屋と、していない部屋の温度差は10℃位にもなりますから充分注意が必要です。
では、ヒートショックを起こさないための建物内の温度差は、
目安は3~5℃程度とされています。
新築建物の遮熱施工は外張り工法を基本としています。この工法ですと、建物全体が大きな魔法瓶となりますので、外部との熱の出入りを極端に少なくすることが出来ます。しかも、魔法瓶の中に構造躯体等熱を保持する建材が多くあるため室内の温度は安定し、室内各所の温度差はヒートショックが発生しにくい3℃以下にする事が可能です。
既築の建物については、天井裏や床下遮熱は比較的簡単に施工できますので、第一段階の工事としてお勧めしたい項目です。特に、冬場の寒さは手足などの抹消部分で感じやすいので、寒さ対策には床下遮熱は是非お勧めしたいと思います。
最終的には、壁面への遮熱工事を施工することにより、新築同様室内温度差の少ない環境を作ることが出来ます。
(4)冷え性対策
冬は、体から床や室内壁面等に放射される輻射熱が減少しますので、冷え性の方には効果的です。特に、冬の床面は寒いですが、本システムを施工する事により寒さの感覚が大きく改善する事が出来ます。
夏は、室温の設定温度が高くなりますので寒さは和らぎます。
(5)あせも対策
あせもは、熱中症と同じで輻射熱が大きく影響します。本システムでは、輻射熱の概ね90%が削減されますのであせも対策には効果的です。
【7】一部屋遮熱システム
(1)一部屋遮熱システムとは
本システムは、天井、壁、床面と室内側全体に内装材兼遮熱材を直貼りするものです。遮熱材は室内側にあるので、エアコンを付けると短時間で室内が温まったり或いは冷えたり非常に即効性が有ります。即効性が有ると言う事は、省エネルギー効果が非常に大きいと言えます。
更に、人体から放射される輻射熱が遮熱材によって反射されますので、過剰な冷暖房は不要になります。例えば、真冬でも体温が瞬時に体に戻されますので、床の寒さが大幅に改善されます。
又、夏は天井や壁面から放射されている輻射熱を90%近く阻止しますので、体温が上昇して起こる熱中症対策には抜群の効果が期待できます。
しかも、一部屋だけでいいので経済的です。
EX::皆が集まる所だからリビングを!
熱中症対策でおじいちゃんの部屋を!
冬は寒いからママの台所に!
可愛いペットの部屋に!
(2)施工と効果
全て、室内の内面に遮熱材が来るように直貼りします。
(3)一部屋遮熱システムのメリット
①数分で目的の温度に到達する瞬間冷暖房
②体温を床や壁で反射、自熱暖房効果大なので体に適した温度になり易い。
③移動速度の速い輻射熱利用で室内の温度差が少なく室温が均一、即ち部屋全体が
温かくなります。
④エアコン使用時間が少なくなり、電気料金が少なくなります。
⑤目的の部屋のみの遮熱施工が可能で、しかも遮熱材が内装材を兼ねるので費用が
少なくて済みます。
⑥一部屋のみの施工が可能で、予算を組みやすくなります。
⑦希望の部屋だけ施工できるので、効率的な冷暖房対策が可能です。
⑧室内の表面温度が上がるので結露防止が出来、カビの発生も殆ど無くなります。特
に、北側に面した部屋などに効果的です。
⑨体温上昇の要因である輻射熱をカットするので、熱中症対策には非常に効果的です
。
⑩輻射熱をカットするので汗をかきにくく、あせもの対策にも効果的。
.
【8】全館遮熱システム
(1)全館遮熱システムとは
熱中症対策、省エネルギー、小屋裏利用、低価格
本システムは、外部に面した床、壁、天井等全ての面に遮熱材で施行します。外部に面した部分のみの施工になるので、最小の面積で済む事になります。勿論、小屋裏利用の場合は、屋根の下側に遮熱材を施工しますので夏でも非常に涼しい環境が得られます。
建物内の蓄熱量を増やす為、天井裏や床下に施工する場合もあります。
寒冷地では、室内から屋外に向けて熱移動する期間が長いので、室内側に断熱材屋外側に遮熱材と複合体として使用すると効果が高まります。
(2)施工方法と効果
①天井裏
一部屋遮熱と同様、室内側の石膏ボードに直貼りします。
②小屋裏
寒冷地等では、室内の断熱性を高めるため、断熱材の上に遮熱材を敷き込み事により、断熱材の蓄熱効果と遮熱材の低放射性能を利用することが出来ます。小屋裏利用の場合は、屋根の下側に遮熱材を施工します。 |
③壁面
一部屋遮熱と同様に壁面の室内側直貼りします。
④床
一部屋遮熱と同様に、床に遮熱材、その上にカーペット敷き込みです。
⑤床下
床の上に施工出来ない場合や床材等を蓄熱材として利用する場合は、床下に施工します。 |
(3)全館遮熱のメリット
①建物内全体に輻射熱カットされるので、暑さの感覚が全く変わります。従って、室温
の設定温度が変わります。
②風のある日なら、窓を開けると超日陰にいる感じがします。
③輻射熱が、大幅にカットできるので熱中症対策に効果的です。
④建物内全体の温度差が少なくなり脳卒中等対策に効果的です。
⑤建物全体に遮熱施工するので、総エネルギーが大幅に削減可能です。
⑥屋根下側に直貼りすると、夏でも小屋裏利用が可能となります。
⑦遮熱施工面積が最小なので、費用も大幅に低減します。
⑧壁内や室内表面の結露を少なくする事が出来ます。
(4)全体遮熱のデメリット
①全て内張りの場合、室内の反響が増える場合があります。
注)エアコンは、室内全体を拡販する様にして使用してください。
【9】使用遮熱材
遮熱材は鏡と一緒ですから、窓から侵入する太陽光が反射して目を傷める事になりますので、壁や床には表面がピカピカするものは絶対使用しないでください。色付きのものは、乱反射構造となっておりますので安心してご使用になれます。
型式 | サイズ | 色、表面処理 | 用途 |
---|---|---|---|
THB-WBER1 | 0.1×1×50 | ベージュ、電食 | 天井、壁 |
THB-SOW1 | 0.1×1×50 | オフホワイト、電食 | 天井、壁 |
THB-SOW2 | 0.2×1×50 | オフホワイト、電食 | 天井、壁 |
THB-M | 0.2×1×50 | シルバー | 天井裏、床上 |
THB-X | 0.2×1×50 | シルバー、電食 | 床下 |